超音波検査は、血液検査と同じくらい当院ではよく実施する検査で病気を診断するうえで、非常に有用な検査です。近年では腹部臓器や心臓だけでなく、肺や体表の細かいリンパ節など様々な部位に検査が実施されています。麻酔をかけることなくできる検査であり、当院では通常、検査中に飼い主様に画像をご説明しながら検査を実施しています。
超音波検査手技に関しては米国画像専門医(超音波やレントゲン検査など画像診断の専門医)からご指導いただいた方法をもとに実施しております(必要に応じ検査部位の毛刈りをさせていただきます)。
今回はいくつかの超音波検査画像や病気について説明させていただきます。

尿管結石
尿管結石の画像です。画像だと大きく見えますが、矢印で示している白い塊は2mm大のとても小さな結石です。結石が尿管内に部分的に詰まっていることから尿管がわずかに拡張しています(矢頭で示しているのが1〜2mmの尿管です)。

膀胱結石1mm
1mm大の膀胱結石(矢印の白い塊)です。黒い部分は膀胱内の尿を示します。小さい結石に関してはレントゲン検査では確認できないことがあるため、超音波検査は有用です。

膀胱結石放射状
ウニのような放射状の形をした膀胱結石です。超音波検査では、結石の大まかな形状までわかります。


膀胱がん血流あり
膀胱腫瘍の画像です。色が付いている部分は血管内の血液の流れを示しており、腫瘍内に血液が流入していることがわかります。

肺正常
正常な肺画像

肺水腫
心臓が悪いことで肺水腫を起こしていた患者様の肺画像です。白と黒の線が散在してみられ、肺炎や肺水腫などを疑う所見です。

MR
先ほどの肺水腫を起こしていた患者様の心臓の画像です。緑色の部分は弁膜症により血液の逆流や乱流を起こしている所見になります。心臓病の治療により体調が良くなってくれました。

ひも2
腸管内の紐状異物の画像です。矢頭で示す白い線が紐の陰影でミシン糸が口から、胃、食道、十二指腸、小腸のほぼ全域にありました。幸い手術により完治してくれました。かなり細い糸でも超音波で検出することが概ね可能です。
 
ひも状異物
 紐状異物(矢頭が示す白い線)の別の患者様の画像になります。特に猫ちゃんは紐状のものを誤飲しやすいためご注意ください。胃内に異物がある場合は、当院では内視鏡にて摘出することが多いですが、腸管で引っかかってしまうと緊急手術が必要です。

種
3cm大の種(黄色の点線部)が腸に詰まってしまった症例で、手術により完治してくれました。最近は、異物による腸閉塞に対してバリウムを用いたレントゲン検査はあまり行われなくなってきており、超音波検査にて多くが診断可能です。 

リンパ腫
腸管のリンパ腫の画像です。腸の黄色の点線部が矢印部の正常部と比較し腸が肥厚しています。細胞診検査にてリンパ腫と診断し抗がん剤治療を実施したところ、これらの病変は改善してくれました。


リンパ節転移
体表リンパ節に腫瘍が転移してしまっている画像です。触診では正常な大きさでしたが、超音波検査にて色が黒く形が不正の部位(矢印部)があったことから細胞診検査を実施したところ肥満細胞腫が見つかりました。腫瘍と同時にリンパ節も摘出し、局所の状態は改善してくれました。


このように、近年では人医療同様、動物医療においても超音波検査は診断に不可欠な検査となっています。超音波検査で体の全てがわかるわけではありませんが、血液検査ではわからない異常を見つけることができることも多々あります。様々な検査結果から診断を確定することは、より良い治療につながるためとても重要です。 

院長 原